30代独身IT派遣の資産形成

新参フリーランスの資産形成

投資・キャリアアップで資産形成し30代でのセミリタイアを目指します。

友達が頑張ってる姿を見て我が身を見つめ直す

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地元の友達からLINE通話があった。

寝ぼけ眼で出るとPC操作についての質問だった。ググればすぐにわかることだったが友達はITに疎い人物なので私が調べて教えてあげた。

その後近況などを話し合った。

この友達は去年までディーラーの整備士として働いていたが、諸事情あって退職し自動車部品メーカーの期間工に転職していた。そして去年末くらいに正社員登用に応募したとのことだった。

正社員登用は筆記試験やら工場での面接やら本社での面接やらいろいろあるらしい。友達は本社での面接まで見事進み、先日それを受けてきたとのことだった。

地元にいたときに、友達が今の会社を辞め、期間工に転職した後正社員を目指すという話は本人から聞いて知っていた。

友達はまさに有言実行していたのだ。

本社での面接の結果が出るのはもうすぐらしい。受かっていてほしい。

そんな友達の近況を聞いて私ももっとしっかりしないとなと思った。

去年末に知り合いに紹介してもらった人から案件をひとついただいていて、先日モックアップを作ることになったもののまだ着手してない。

明確な期限を切っていないことをいいことに先延ばしにしている。

着手さえしてしまえば乗ってくるのはわかってる。しかしその第一歩が果てしなくめんどくさい。

待っているばかりでは案件はやってこない。自分から仕事を取りに行かないとフリーランスなんてすぐに立ち行かなくなってしまう。

今抱えている案件がどういう状態だろうと、もう一度エージェントに連絡してみようと思う。

去年の時点ではポートフォリオすらなかったが、今はポートフォリオもあるしいくつか実績も載せている。

それでも厳しそうだったら正社員かアルバイトで働こうと思う。

正社員かアルバイトで実績を積んでまたフリーランスになるか、それともそこで働き続けるか、まだ自分の中で気持ちが定まってない。

年が明けてから漠然とした思いはあったがはっきりと考えることを拒否していた。

それが友達との通話で思い正された。

友達に話したところで解決するとは到底思わない。それでも思いを誰かに吐露するだけで気持ちはすっきりする。

そんな話を聞いてくれる友達がいてくれて本当に恵まれてると思う。

めったに私からは連絡せず、いつも向こうから近況を聞いてくれたりしてくれるから申し訳ないと思う。

今はコロナで地元に帰ることはできないが、落ち着いたら地元に帰って語り明かそう。

ノスタルジック '00 こぼれ話

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基本情報
  • 実話を基にした小説風のなにか。一部、台詞などに脚色あり。
  • 作中に登場する人名などの固有名詞はすべてフェイク。
  • タイトルの「'00」は2000年代(2000年〜2009年)を意味しており、2000年のことではない。

 

補足情報

以下の内容はネタバレを含む。

  • 「妙な感想」を誰が書いたのかは不明。新野がどういう感想を書いたのかも不明。
  • 相原は新野にラビリンスの中で告白したが玉砕した。その際、新野の意中の相手が榊であることを知った(後に相原の言で判明)。
  • 新野はあの日になにも進展がなければ諦めようと思っていた(後に新野本人の言で判明)。相原が「今日のうちに告白しろ」と念押ししたのはそのため。

 

イメージ曲

夏色 / ゆず

www.youtube.com

ノスタルジック '00 (15) 《告白》

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今日の締めくくりにみんなで大観覧車に乗ろうということになった。

三枝さんの「相原くんとふたりで乗りたいな」という一言により、相原と三枝さん、ぼくと新野さんに分かれて乗ることになってしまった。

三枝さんのこの発言は、おそらく本心ではないと思った。なぜならラビリンスというアトラクションで彼女と一緒に行動していたとき、彼女はぼくに協力してあげると言ったからだ。

三枝さんと相原がふたりで乗ることにより、残されたぼくと新野さんも必然的にふたりで乗ることになる。

相原の様子も変だった。今日一日の発言や行動からすると、三枝さんの言葉に反発してもおかしくないと思ったが、意外にもすんなりとそれを受け入れた。ラビリンスの中でなにかあったのだろうか。

ぼくたちを乗せた大観覧車のゴンドラはゆっくりと高度を上げていく。はじめは地上にいる人たちの目鼻顔立ちを判別できていたが、だんだんと靄がかかったようにおぼろげになっていった。

「きれいだね、夕日」

新野さんが外を見ながらつぶやく。夕日が遊園地のアトラクションをオレンジ色に染め上げていた。

彼女はどんなことに思いを馳せているんだろうか。その横顔はどこか憂いを帯びているようにも見えた。

彼女のことがもっと知りたかった。ぼくは覚悟を決めた。

「初めて選択授業があった日、新野さん、挨拶してくれたよね」

「無視されちゃったけどね」

「それは、ごめん。でも、本当は嬉しかったんだ」

「うん...」

「ありがとう」

「お礼なんて、いいよ」

「新野さんとときどき話すようになってから、週に一回の選択授業の日が楽しみになってることに気づいた」

「...」

「ふたりで一緒に帰った日、はっきりとわかった」

「...」

「新野さんのことが好きなんだって」

恥ずかしくて、恐くて、彼女のほうが見れなかった。手が震えた。体温が熱かった。

彼女はなにも言ってくれなかった。彼女の様子を確認したかったができなかった。永遠とも思える時間がいつまでも流れたような気がした。

「わたしも」

彼女が口を開く。

「好きだよ、榊くんのこと」

「...ほんとに?」

「うん」

思わず泣きそうになってしまった。嬉しさと、緊張から開放された喜びとで。泣くわけにはいかないのでぐっとこらえた。

彼女の言葉を聞いた後も信じられないという思いでいっぱいだった。

ぼくたちを乗せたゴンドラはいつの間にか折り返し地点の頂上を通り過ぎ、地上へ向けて下降を開始していた。とにもかくにも必死でまったく気づかなかった。

ぼくが彼女に思いを伝えた後、彼女は長らく黙ったままだった。答えをどうするか考えていたんだろうか。ぼくは彼女にそのことについて尋ねてみた。

「答えは最初から決まってたよ」

「じゃあ、なんで...」

「待ってたの」

「なにを?」

「ゴンドラがてっぺんに来るの」

こっちは緊張で張り裂けそうだったというのに、ロマンチックなものに演出するためにわざわざタイミングを見計らっていたとは...

彼女には勝てないなと思った。

数分後、ぼくたちを乗せたゴンドラが地上へ帰ってきた。ゴンドラを降りると先に乗っていた相原と三枝さんが待っていた。

「その様子だと、ハッピーエンドみたいだな」

「良かったね、新野ちゃん」

相原と三枝さんが声をかけてくる。このふたりが協力してくれたから思いを伝えられたのかもしれない。そう考えるとふたりにも感謝したかった。

「ん?」

ふたりの手が繋がれていた。

「おれたち、付き合うことになった」

三枝さんの「相原くんとふたりで乗りたい」という発言は本心だったということか。

三枝さんが不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ている。やっぱり彼女の考えていることはわからない。

ふと気がつくと新野さんがこちらを見ていた。ああ、そうか。

ぼくは新野さんの手を握った。

彼女はぼくの手をぎゅっと握り返した。

(了)

ノスタルジック '00 (14) 《罰ゲーム》

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「あたしが協力してあげる。ただし、一回だけね。もしそのチャンスを活かせなかったら、もう知らないよ」

三枝さんはそう言うと立ち上がった。

「そろそろ行こ。あんまりぐずぐずしてると相原くんたちに負けちゃうよ」

ぼくも立ち上がる。

彼女はいったい何をするつもりなんだろう...

協力してくれるというからには、悪いことではないと信じたい。

その後、ぼくたちは再び入り組んだ迷路構造をひたすら進み、ようやく出口へとたどり着いた。結局、謎解きらしい謎解きも見つからないままゴールまできてしまった。

アトラクションの外に出てみると、すでに相原・新野さんチームはゴールしていたようで、ぼくたちのことを待っていた。

「おれたちの勝ちだな」

「負けたよ」

「榊、負けたおまえには罰ゲームを受けてもらう」

「罰ゲームって、そんな話聞いてないぞ」

「勝負なんだから負けたほうにペナルティがあるのは当然だろ」

「だから、そういうことは最初に言えって...」

「まあ、ちょっとこっち来い」

相原がぼくに肩組をする。そのまま新野さんや三枝さんから離れたところに無理やり連れて行かれてしまった。

「榊、おまえ新野のこと、好きなんだろ」

「え...?」

突然の相原の言葉に戸惑う。百歩譲って相原がそのことに気づいていたとしても、なんでいまこのタイミングで聞いてくるのか理解できなかった。

「なんで...」

「わかるよ、それくらい」

一瞬、相原が寂しい目をした、ように見えた。

「今日のうちに気持ちを伝えろ、それが罰ゲームだ」

「今日のうちにって、もう夕方だぞ」

「気持ちを伝えるにはいい時間帯だろ?」

それだけ言うと相原は女の子たちのいるところへ戻っていってしまった。

相原が突然言い出したことに理解ができない自分がいた。いや、理解しようとするのを拒んでいたのかもしれない。

そもそも相原はなんで知っていたんだろう。あの言い方からしてまるで事実を確認するかのようだった。それから罰ゲームだとか言って今日中に気持ちを伝えるよう仕向けてきたのもわからない。今日中というのも変な話だ。もうすでに夕方だし、そんなタイミング残されてないんじゃ...

思考がまとまらない。考えることが多すぎる。

ひとまずぼくはみんなのところへ戻ることにした。いつまでもみんなから外れて考え込んでいるのも変だし、いまは特に勘ぐられたくない。

「あーあ、今日がもう終わっちゃいそう」

「次に乗るアトラクションが最後になりそうだな」

「最後はやっぱり...」

みんなが空を見上げる。堂々とそびえる大観覧車があった。

電車の車窓からはじめに見えたアトラクションもこの大観覧車だった。あのときは大観覧車を見て一日のはじまりに胸をふくらませていたが、いまは同じ大観覧車のはずなのに無性に寂しい気持ちになる。

「あたし、相原くんとふたりで乗りたいな」

三枝さんがつぶやくように言った。

――あたしが協力してあげる。

三枝さんの言葉が思い出される。間違いなくこのことだと思った。

「おれと? まあ、いいか。榊、おまえは新野と乗れよ」

相原が露骨に目配せしてくる。やめろ。

相原と三枝さんが先に乗り、その後に続いてぼくと新野さんも乗り込んだ。

一周約15分の大観覧車が僕たちを乗せて回り始めた。

ノスタルジック '00 (13) 《協力》

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「2:2のチームに分かれて、ラビリンスの出口目指して競争するってのはどうだ。チーム分けは、他校同士の親睦を深めるために、おれと新野、榊と三枝にしよう」

有無を言わさずまくしたてる相原に一言言い返したい気持ちもあったが、相原の言っていることも一理あると思った。

せっかく違う学校の生徒同士で遊びに来ているんだから、同じ学校の生徒とばかり行動しているのはもったいない気がする。

特にぼくと新野さんの場合、ついさきほどまでふたりでお化け屋敷に入っていたのでなおのこと弱い立場にあった。

ぼくたちは相原の言うことに合意し、ぼくと三枝さん、相原と新野さんに分かれてスタート位置についた。

「準備はいいか、それじゃスタート」

相原の合図で正面扉が開かれた。中は思ったより薄暗い。入り口からまっすぐ一本道が続いている。そのまま一本道を進むと、左右に道が分かれた突き当たりに行き当たった。

「ちょうど道がふたつに分かれてるな。ここが本当のスタート地点ってわけだ。おれたちは左の道を行くから、榊たちは右の道だ」

「わかった」

「じゃあな、先にゴールで待ってるぜ」

キザなセリフを残して、相原と新野さんはぼくたちとは反対側の道へと消えていった。

ぼくと三枝さんも注意しながら進むことにした。お化け屋敷のように驚かされることはないはずだが、ちょっとした謎解き要素もあると聞いていたので、どこかにヒントが隠されているかもしれない。

しかし進めど進めど謎解き要素どころかヒントすらない。ほとんどは入り組んだ迷路構造の薄暗い道か、突き当たりにたまにある大きな鏡に写った自分たちに少し驚くという程度のギミックしかなかった。

「謎解きがあるっていうから期待してたのに、ちょっとがっかり」

ついに三枝さんが愚痴り始める。あの明るい性格の三枝さんですら辟易させてしまうとは、ラビリンス恐るべし。

とはいえ三枝さんの言っていることももっともだ。謎解きがないばかりか、やたらと入り組んだ迷路構造に体力も精神も削られていく。相原と新野さんも同じように苦しんでいるんだろうか。

ぼくたちは少し休憩することにした。といっても休憩できるようなスペースは近くにはなさそうだったので、邪魔にならないように通路の端に並んで座って休むことにした。

「それにしても、相原くんにしてやられちゃったね」

「なにを?」

「そんなんじゃとられちゃうよ、新野ちゃん」

「なに言って...」

「いまごろ告白してたりして」

「...」

ぼくがなんとなく考えないようにしていたことをあっさりと言葉にする三枝さん。

考えないようにはしていたが、ずっと気にはなっていた。相原にチーム分けのことを切り出されたときは出し抜かれたと思ったし、いまも相原・新野さんチームのことが気になっている。

いまのまま手をこまねいているようでは、三枝さんの言うとおりになってしまうかもしれない。

「ねえ、お化け屋敷ではどうだった?」

「あんまり怖くなかったかな」

「そうじゃなくて、新野ちゃんとはどうだったの?」

「どうもこうも、新野さんが怖いって言うから、出口までずっとぼくの後ろに隠れてもらってた」

「ふーん...」

三枝さんはなにかを考えるているようだった。彼女にはぼくの考えていることなどすぐに見透かされてしまうが、ぼくには彼女が何を考えているのかさっぱりわからなかった。

「あたしが協力してあげる」

脈絡もなく三枝さんが言った。

「協力?」

「そう。ただし、一回だけ。もしそのチャンスを活かせなかったら、もう知らないよ」

ノスタルジック '00 (12) 《盾》

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新野さんが指差す先には、楽しいはずの遊園地には似つかわしくないおどろおどろしい雰囲気の建物があった。お化け屋敷だ。

お化け屋敷は絶叫系が乗れないぼくにとって、それなりに楽しめる数少ないアトラクションのひとつだった。しかもこのお化け屋敷には小さい頃に何度か入ったことがある。

「いいよ、入ろっか」

男女がお化け屋敷に入るというシチュエーションで男がすべき仕事はただひとつ、怖がる女の子をさっとリードして安心させてあげることだ。

お化け屋敷の中の構造は小さい頃に入ったことがあるのでなんとなくわかっている。怖がらず堂々としているぼくを見て彼女は惚れ直してくれるかもしれない。

しかしお化け屋敷に入ろうと言ってきたのは新野さんのほうだった。もしかしたら彼女は怖いのが平気なんじゃないだろうか。

怖がってもない女の子を安心させる必要はないし、いくらぼくが堂々としていたってそれが普通だと思うだけだろう。

そんなことを考えながら入口の暗幕をくぐる。

薄暗い通路が伸びており、その横におどろおどろしい格好をした人形が立ち並ぶ。子供の頃見たよりもさらに作り物然としていてちゃちに見えた。

人は未知のことに恐怖を抱く。闇夜に染まる夜道の先に、得体の知れない何者かがいることを想像して身を震わせる。

ぼくは成長し、その間にいろいろな経験をした。いまのぼくにはお化け屋敷の暗がりの先に何があるかわかってしまっている。

「ん?」

身を縮こまらせ、あたりを警戒するように視線をさまよわせる新野さんがいた。

「...ひょっとして、怖いの?」

無言でうなずく新野さん。

考えてみれば、怖いからこそ誰かと一緒に入りたかったのかも知れない。文字通り怖いもの見たさというやつだ。

「ぼくが前を歩くから後からついてきて」

ぼくがそう言うと新野さんはささっとぼくの背後に身を隠した。これはこれでいい、かもしれない...

その後、先行して歩くぼくとぼくを盾のようにして歩く新野さんという構図のままお化け屋敷を数分間さまよった。

そして最後に暗幕をくぐると出口だった。数分ぶりの強い日差しに目がくらんだ。

お化け屋敷を出ると、さきほどまでいたところで相原と三枝さんがぼくたちを待っていた。どうやらブラックトルネードは乗り終わったらしい。

「どこ行ってたんだよ」

「そこのお化け屋敷だよ」

「ふーん、ふたりで?」

三枝さんが不敵な笑みを浮かべながらぼくに水を向ける。

「そうだよ」

「せっかくみんなで遊びに来てるんだから、あんまり別行動すんなよ」

「ごめんね、わたしが入りたいって言ったから...」

ぼくに対してなら強く言える相原も、新野さんに謝られてしまうとおとなしくならざるを得ない。

場の空気が重くなりかけたとき、取り持つように三枝さんが話題を変えた。

「ねえ、次はあそこに行こうよ。あそこなら四人で入れるでしょ」

三枝さんが示したのは無機質な四角い建物だった。子供の頃来たときにはなかったので、新しくできたアトラクションなのかもしれない。

アトラクションの名前はラビリンスと言って、建物全体が迷路のようになっている。ちょっとした謎解きなんかもあるようで、子供じゃなくても楽しめそうなアトラクションだった。

三人とも異論はないようだったので、次はラビリンスに入ることになった。

「なあ、せっかくだし2:2で分かれて入ろうぜ」

「は?」

「2チームに分かれて出口まで競争するんだ。チーム分けは、他校同士の親睦を深めるために、おれと新野、榊と三枝でどうだ」

相原がひとりでどんどんと話を進めていく。さっき自分で「別行動するな」とか言っていたくせに。そもそもラビリンスって競争するようなアトラクションなのか?

ノスタルジック '00 (11) 《別行動》

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「気にならない、新野ちゃんの気持ち?」

三枝さんは不敵な笑みを浮かべながら言った。

おそらく彼女は他人の機微に人一倍敏感な性格なんだろう。他の人の気持ちを感じ取りやすいからこそ、場の空気を和ませることにも長けている。

実際、ぼくや相原のことなんかはすでに見透かしているようだった。相原はともかく、ぼくとは会ってからそれほど経ってないというのに。

新野さんの気持ちか。気にならないと言えば嘘になる。

「...気にはなるけど、知らないままでいい」

彼女の気持ちを知ってしまうのが恐かった。

「そっか。でも、意中の人がいるってことは否定しないんだね」

三枝さんは「意中の人は他にいる」と言った。三枝さん以外の女の子といえばひとりしかいない。つまり三枝さんにはぼくの意中の人が誰なのか知られてしまっているということだ。

それでも構わなかった。ぼくは隠し事が得意なほうではない。今日一日を一緒に過ごしていれば、遅かれ早かれ感づかれていたことは想像に難くない。

「あれ、怒らせちゃった...?」

三枝さんが胸の前で小さく手を合わせながらぼくの顔を覗き込んできた。怒ったような表情をしてしまっていたのかもしれない。

きっと彼女はぼくに対する純粋な親切心から新野さんの気持ちを教えてくれようとしたんだろう。彼女の表情を見れば悪気がないということはわかった。

「いや、そんなことないよ。それよりほら、遊園地が見えてきた」

新野さんと相原もつられて外を見る。車窓からは遊園地の大観覧車が見えていた。

この遊園地には子供の頃によく家族で来たことがあった。ここ数年は足が遠のいていたが、子供の頃にここで遊んだ楽しい思い出はいまでも鮮明に覚えていた。

あの頃はまさか自分たちだけで遊園地へ来るようになるとは思いもしなかった。しかも今日は女の子まで一緒だ。断ろうと考えたこともあったが、やっぱり来て良かった。

 

ぼくたちは遊園地の入場ゲートで入場券と乗り物チケットを購入した。

遊園地に入ると、わくわくを抑えられないといった感じで三枝さんが切り出した。

「ねえねえ、まずなにに乗る?」

「やっぱり、最初はあれだろ」

言いながら相原は彼方に向けて指を向ける。その指の先には...

「ブラックトルネード...」

ブラックトルネードは全国でも有数のスピード、距離、恐怖度を誇るジェットコースターだ。急転直下に始まり大カーブ、大車輪、スクリューなど考えうる限りの恐ろしいポイントが惜しげなく詰め込まれている。

三枝さんなどはブラックトルネードを見て目を輝かせている。

「ごめん、ぼくはやめとく」

「なんだよ榊、恐いのか?」

なんとでも言え。恐いものは恐いのだ。高所恐怖症の人以外にはむき出しの生身のまま地上から離れる恐怖などわかるまい。

股のあたりからふわっと持ち上げられるような感覚になり、自分から奈落へ身を落としそうになったことが何度もある。

「わたしも、やめておこうかな...」

おずおずと手を低く上げながら新野さんが言った。

「わたしもこういうの、苦手だし...」

「新野も?」

不満顔の相原。不満の原因はふたりもブラックトルネードに乗らないと言ったことか、それとも...

「まあまあ、あたしたちだけで乗ればいいじゃん。ほら、行こ」

三枝さんが相原をなだめるようにしてブラックトルネードのほうへと誘導していった。

「...」

「...」

「さて、どうしよっか」

「どうしよっか」

残されたぼくたちふたりはしばらくブラックトルネードに向かって歩いていくふたりを眺めていたが、ふたりの姿が見えなくなるとやることがなくなってしまった。

それにしても新野さんまでジェットコースターが苦手だとは思わなかった。なんとなくこういうのは女子のほうが好きなもんだと思っていたから意外だった。

ぼくの場合、いちおう密閉された空間であれば高いところでもなんとか耐えられる。しかしむき出しの生身のままとなると一気に恐怖値が上がる。

ジェットコースターしかり、フリーフォールしかり、バイキングしかり。遊園地のアトラクションなんてものはほとんどがむき出しで乗るようになっている。

高所恐怖症の人にとって遊園地というのはあまり楽しくないところなのかもしれない。

そういえばうちの親も高所恐怖症だったな。高所恐怖症って遺伝するんだろうか...

「ねえ、あれ...」

不意に新野さんが言う。

「あそこ、入ってみたいな」

新野さんの指差した先にはお化け屋敷があった。