初めて外国人に道を聞かれる

彼女とのデートの終わり際、改札前で立ち話をしていたら、私の肩をなでるような感触があった。

私はてっきり誰かのカバンか何かが触れてしまったのだろうと思ったが、感触があった後にひとりの男性が感触のあった肩のほうから回り込むようにして私たちに話しかけてきて、そのときどうやら本当に手で撫でられていたのだと理解した。

男性は白人の外国人で、何やら英語で話しかけてきた。おそらく男性的にはゆっくりと丁寧に英語を喋っているつもりだったのだろうが、英語のヒアリングができない私には何一つ聞き取ることができなかった。

彼女も英語はできないはずだが、なんとか言っていることを理解しようと身を乗り出して耳を傾けていた。優しい。

ここが改札前であることと唯一聞き取れた「Ikebukuro」から推測すると、おそらく男性は池袋に行きたいのだと思われた。しかし乗るべき電車がわからず困っているといった具合だろうと予想された。

私が「Yamanote Line」と言うと、男性は得心が行ったように明るい表情となり、グッと拳を突き出してきた。欧米的な挨拶であると理解した私は、同じように拳を突き出し男性のそれにぶつけた。彼女も私に倣った。

男性は礼を言うと、手を上げながら改札のほうへと去っていった。

そのまま男性を見守っていると、こちらを振り返ることなく腕を天高く突き上げ、手はサムズアップにして改札を通っていった。なんとも欧米的なやり取りだったなと思った。