「お母さんのとこって鳥葬なんだっけ?」
あれは何年前だったか、まだ私が小学生くらいのことだったように記憶している。
家族で母方の祖父母宅へ行っていたときのことだから、恒例となっていたお盆か年始の時分だったはず。
親戚一同が集まっていつもより豪華なお昼ごはんをみんなで食べる。
お昼ごはんを食べ終わり居間でくつろいでいるときに、どういう話の流れだったかは覚えていないが、唐突に父が冒頭の言葉を吐いた。
鳥葬(ちょうそう)とは葬儀、または死体の処理方法のひとつであり、肉食の鳥類に死体を処理させるものである。
現代日本においては死体は火葬することが決まっており、仮に鳥葬してしまうと死体損壊の罪に問われる。
しかし調べてみるとかつての日本でも鳥葬に似たような死体の埋葬をしていたことがわかる。
時代を平安時代にまで遡ると、京都府の鳥辺野という地域で鳥葬による埋葬が行われていた記録がある。
地名からも分かる通りそこは鳥葬をするための土地だったようで、鳥葬、あるいは野葬の文字をとって地名が付けられている。
その他の地域については、貴族などの埋葬方法についての記録は残っているが、名字もないような一般庶民がどのような埋葬方法を行っていたかの記録は残っていない。が、死体をわざわざ燃やすことはせずに、そのまま放置(野葬)していた可能性も少なからずあるのではないか。
文献という形では残っていないものの、口伝で語り継がれてきた埋葬についての文化が地域に根ざした形で今も残っているのかもしれない。
父の言葉に対し母がなんと答えたかすら定かではない。