『ぼぎわんが、来る』感想

『ぼぎわんが、来る』というホラー小説を読み終わった。

読み始めたときの記事では「かなり怖い」と書いたけど、最後まで読み終わってみると評価は「そこそこ怖い」に変わった。

「かなり怖い」と書いたときは100ページ弱しか読んでおらず、その時点では物語の主人公となる怪異の恐ろしさだけが描かれていた。

作品の最後では、怪異VS有能な霊能者のバトルが始まり、霊能者が勝つ。

個人的にこういうのはいらないと感じた。

ホラー小説の主人公は怪異そのものであって、霊能者が登場するのはいいとしても、そっち側が勝ってしまったらホラーとしての軸がブレると思っている。

『カエル男』という小説でも、最後のほうで殺人鬼VS主人公が壮絶な肉弾戦を繰り広げる描写があるんだけど、それと同じ冗長さを感じた。

『カエル男』は猟奇的な殺人を繰り返す犯人を追うミステリ小説。

犯人が一向に判然とせず、不気味な雰囲気が漂っているところは非常に良かったが、唐突に犯人との殴り合いが始まって「おいおい...」と思った。

しかもそのバトルシーンがめちゃくちゃ長いからそこだけ飛ばした。飛ばしても後の展開にさほど影響がなかった。

話を戻す。

『ぼぎわんが、来る』でも割と序盤で、かなりキャラの立っている霊媒師が登場した時点で「おやおや...?」と思ってはいた。

それでも怪異の描写が際立って怖かったので頑張って読み進めていた。

終盤に近づくにつれ怪異の正体が判然となってくる。物語としてどこかに着地させるときが近づいている。

最終的に怪異が勝ってしまったらハッピーエンドにならない。霊能者、つまり人間側の勝利で終わらせる必要がある。

あくまで個人的意見だが、ホラー小説の主人公は怪異だと思うので、最後まで怪異が最強のまま、不気味なまま終わる作品があってもいいなと思う。

ホラー小説を読む理由はぞくぞくしたいから。

『不安の種』という漫画のように、不気味な雰囲気で始まりそのまま何も解決せず終わる。

私がホラーに求めているのはそれだけ。

初めから映像化を意識したような練られすぎたキャラクター設定やアクションシーンはホラー小説にはいらない。