私はよく父親からメールで頼まれて本の注文を代理で行っている。
父親世代はインターネットなどできるはずもなく、本を調達するには店舗に行く必要があるのだが、ど田舎住みのため店舗に行くのも一苦労な上、昨今は実店舗が縮小傾向にあり、品揃えもインターネットほどよくないという現状がある。
そんなわけでいつからか父親が欲しい本のリストを定期的にメールで送ってくるようになって、私がインターネットでそれらの本を安く購入するということをしている。
両親は物理的に離れたところで生活しているので、こういった連絡でも定期的に送ってきてくれると倒れたりしてないんだなとひとまず安心ができる。
先日もメールがあり、時間の空いたときに購入してその旨を父親に返信した。
いつもならすぐにでも返事が来るのにこのときは丸1日が過ぎても返事が来なかった。こんなことは初めてだったが、メールに気づいていないとか返信するのを忘れているとか考えられなくもないのでそれほど気にしていなかった。
そのまま数日が経ったある日、自宅に何やら荷物が届いた。自分で買ったものなら把握してるし、両親が送ってくれるときも事前に連絡がある。今回はそのどちらでもないので訝しんでいたが、差出人は父親の名前と実家の住所になっていたのでとりあえず受け取った。
さっそく開けてみると、普通に食料などの物資が詰め込まれていた。ただ、一番上にいつもはない封筒が一枚置かれていることに気づいた。
なんとなく嫌な予感がした。おそるおそる封筒から便箋を取り出し、したためられている文章を目で追った。
要約すると次のようなことが書かれていた。
「本の注文ありがとう。携帯電話の機種変更をしたらメールの返信ができなくなりました。説明書を読んで返信ができるようになるまで昔ながらの手紙を送ることにします」
拍子抜けしたが、体調などには特に何も問題ないようで一安心。
メールの返信がないことは実はずっと気になっていた。母親あたりから「お父さんは入院することになりました」みたいな連絡がいつ来るのではないかと不安な気持ちだった。
今現在、公私含めて忙しい時期であり、こちらから連絡して状況を伺うということができていなかった。もし何かあればすべての予定をキャンセルして駆けつけなければならない。
こうしている間にも時間は等しく流れ続けている。時間が経てば経つほど両親の身になにかが起こる可能性も高まってくる。
もしかしたらあと少しで実家の両親にいい報告ができるようになるかもしれない。それまでは健康でいてほしいと切に願う。